良い糸、悪い糸のお話し
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いやー!本当に抽象的ないいタイトルですねー!
私がこのようなタイトルを付けたのには訳があります。
それは、メールにて糸についてお問合せ頂く多くの方と、私が日常まわっている多くの機屋さんとでは言うことが全然違うからです。
話を聞いていると目的が違う事にはっきりと行き着きます 。
では、どのように違うのか説明していきましょう。
(今回のテーマは、皆様の勉強と言うより私の勉強したことかな?)
まずは目的の違いですが、各産地の機屋(帯&着物製造メーカー)さんの目的はいかに売れる物をつくるか?に対して、個人染織作家さん(違う人ご免なさい)の目的は自分の満足のゆく物をつくる事なのです。
この違いは確実に材料である糸にまで影響を及ぼしているのです。
これから先は機屋さんをベースに説明を書いていきたいと思います。
(国内の使用量を考えるとやはり機屋さんが中心になってしまいます。)
多くの機屋さんが求めている生糸、絹糸は、、、
①出来る限り低価格な糸(利益率を高く する為には必要)
②少しでも使いやすい糸(扱いやすい結果、人件費を抑える事が出来る)
③クレームの出ない織物をつくる事が出来る糸(厳しい問屋さんの検品に対応できるように)
皆さんも上記の事は理解していただけますよねー。
そして各業者も下記のように変化してきました。
○養蚕農家
糸量の多い、大きな繭玉を作製できる品種に改良。(生糸の取れる量は多いが節も大きくなる)
出来るだけ白くて美しい繭をつくる品種に改良。(高価で売買できる)
病気にならずに、死なない品種に改良。(毎年確実な収入がはいる)
○製糸会社
沢山の安い生糸を製造する製糸機械に改良してきた。(スピードアップ)
出来るだけ太細&節のない綺麗な生糸を製造する。(織物の傷を減らす)
○生糸商社
利益率の高い輸入生糸&撚糸の輸入に力を入れてきた。
○織物会社
出来るだけ傷の無い織物を製造する。
出来る限り原料費、人件費を安くする。
このように業者が求めて来た原因は実際、呉服業界とそのお客さまのニーズ、、と言うのも事実。
一方、
多くの個人染織作家さんの求める生糸、絹糸は、、、
①テンションの張ってない柔らかな風合いの生糸。
②少しぐらい高価でも国内で丁寧に作られた生糸。
③稀少な珍しい絹糸を使用してみたい。
これらの違いにより双方の求める糸が、少しづつかけ離れてきてしまったのです。
価格的な部分を重視する為に国内の生糸の生産も少なくなり、少なくなる事により特殊な絹糸の生産も出来なくなるなど(生糸を大量に製造しないと副産物である特殊な絹糸の原料も出来ない)、どんどん悪循環が起こっているのが現状です。
後は生糸の場合は関税と輸入制度、そして為替ですね。
なんとか今後の物づくりの為に、私も少しでも、、、とは思っているのですが、、、
当社なんかでは非力過ぎて、現状を変える力も無く、指をくわえて見ているしかない状況です。
悲しい事に理想と現実は違います。
またいざと言う時は是非、皆さまお力になってくださいませ。
よろぴくお願いします~~~!
出来れば「物づくりするすべての人が自分の好きな作品だけを作製出来る世の中」になって欲しいものですね。
※これらは2000年4月27日に西陣の糸屋が発行したメールマガジンを変更した内容です。
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最終更新日2012年2月
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